ケーススタディ

介護事業の労務管理(ケース No.2)

平成24年度から在宅・居住系サービスの強化の一環として、24時間対応の訪問サービスや小規模多機能型サービスの充実が掲げられたので、当事業所も今後のサービス内容の充実化等事業の拡張を図る上で、若手の正社員等(介護福祉士等)を数名雇いたいと考えています。募集や採用等において、注意すべき点があれば教えてほしいのですが。

了解。では、関係する事柄を順にご説明いたします。

  1. その1:正社員の募集時のポイント
  2. その2:面接のポイント
  3. その3:採用時の必要書類のポイント
  4. その4:関連する助成金のポイント

その1:正社員の募集時のポイント

「女性に限る!」での募集は、できません。

男女雇用機会均等法で禁止されています。ただし、貴社の事業所の状況において、例えば、募集する職務のうち入浴介助等の身体に接する業務のウエイトが大きくて、職員も一方の性の職員ばかりで他方の性の職員が不足していて、業務に支障をきたしている場合は、認められる可能性があります。

労働者名簿や利用者名簿、勤務シフト等で、事情をきちんと説明しましょう。

「年齢制限」での募集も原則はできません。

H19.10.1の改正雇用対策法で禁止されています。ただし、例外的に年齢制限が認められるケースがあります。

例外事由(雇用対策法施行規則第1条の3第1項)

<1号>定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

<2号>労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合

<3号のイ>長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

<3号のロ>技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

<3号のハ>芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合

<3号のニ>60歳以上の高年齢者又は特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る。)の対象となる者に限定して募集・採用する場合

<3号のイ>に該当するケース

今回の場合、正社員の募集であれば、<3号のイ>に該当、例えば、
「35歳未満の方を募集(介護福祉士、ヘルパー2級以上)」

他に認められるものは、
「35歳未満の方を募集(職務経験不問)」

認められないもの

×「35歳未満の方を募集(〇〇業務の経験のある方)」
×「20歳~35歳の方を募集」
×「35歳未満の方を募集(契約期間1年)」

  • パートさん募集のときは、「年齢不問」にしましょう!!
  • 「来年3月卒業予定の方を募集」の場合は年齢制限に該当しませんが、
    新卒者以外の若年者にも募集する努力が必要。
<3号のロ>に該当するケース

<3号のロ>に該当するケースとして、『30歳~49歳』のなかで、介護福祉士がある年齢層だけが特段に少ない場合、(20歳~29歳:6人、30歳~39歳:2人、40歳~49歳:5人)

  • 同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して1/2以下であること。
  • 募集年齢幅は、「5歳~10歳」であること。

⇒「介護福祉士、30歳~39歳の方を募集」はOK!!

認められないもの

×「介護福祉士、25歳~34歳の方を募集」
「30歳~49歳」の範囲に収まっていない

×「介護福祉士、35歳~49歳の方を募集」
募集年齢幅が「5歳~10歳」を超えている

×「介護福祉士、30歳~39歳の方を募集 (20歳~29歳:30人、30歳~39歳:15人、40歳~49歳:25人)
上下の年齢層と比較して1/2以下になっていない

長期勤務によるキャリア形成を図る観点での募集採用について

また、長期勤務によるキャリア形成を図る観点での募集採用(3号のイ)であれば、
「30歳未満を募集」「25歳未満を募集」の場合は、
「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」に基づき、若者の応募機会の拡大等の観点から広く応募できるように努める必要があります。

もう一つ!!

深夜業では、例えば
「午前1時~4時まで、18歳以上」の方を募集
⇒18歳未満は深夜業は原則禁止のため。

このように、募集の際は何かと制限がありますが、採用は事業所が主体的に決定すれば良いことですよ。

その2:面接のポイント

チェックポイント
  1. 面接で判断する目標が明確か。
  2. 客観的に判断できる方法、基準があるか。
  3. 質問内容を十分に検討したか。
  4. 応募者の基本的人権が十分尊重されているか。
  5. 観察力があり、感情に左右されない、適切な人が面接を実施しているか。
就職差別につながる質問は注意しましょう!!!

「収集してはならない個人情報」としては、

 「本籍地・出生地」「家族状況(職業、収入等)」「生活環境・家庭環境」「住宅状況」「本人の資産(借入状況)」「容姿・スリーサイズ」「思想・宗教・人生観・生活信条・支持政党」「購読新聞」「愛読書」「尊敬する人物」などなど

「全員でチームワーク面接」も良いかも!!!

皆で一緒にチェックポイントを考えて、役割決めて!

~応募者も、一緒に働く人たちの顔や声を聴くことができるし、受け入れ側も、何か問題等が発生しても、チームワークで解決できる方向へ~

どうでしょうか?! 色々と創意工夫が一番ですね。

その3:採用時の必要書類のポイント

最終選考にあたって、応募者から提出させる書類
  1. 履歴書(写真添付)
  2. 卒業(見込み)証明書
  3. 資格証明書
  4. 健康診断書 等
採用決定した者から提出させる書類
  1. 誓約書
  2. 住民票記載事項証明書
  3. 扶養親族関係、税法上必要書類
  4. 通勤願届  等
採用選考時の健康診断のポイント
  • 応募者の適正と職務遂行能力を判断するためのもの。
  • 応募者に対して、事前に目的等の説明と本人の承諾を得る。
  • 採用時の検査項目と「雇入れ時の健康診断」の検査項目が同じであれば、労働者の健康を確認する上で問題はなし。(採用後はその検査項目をもって雇入れ時の健康診断として保管することとなる。)
「雇入れ時の健康診断」検査項目
  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重 ~ 等

健康診断書の提出は、全員ではなく、最終選考者のみとし、キチンと説明をして同意を得ましょう!!

その4:関連する助成金のポイント

雇い入れ関係  (24年3月までのものがあります)
  1. 派遣労働者雇用安定化特別奨励金
  2. 若年者等正規雇用化特別奨励金
  3. トライアル雇用助成金
  4. 特定求職者雇用開発助成金
派遣労働者雇用安定化奨励金 100万円

6ヶ月を超えて派遣受け入れをしていた労働者を正社員として雇入れた場合

若年者等正規雇用化特別奨励金 100万円 (~2012.3月)

フリーター(1年以上雇用保険に入っていない者)を正規雇用した場合

トライアル雇用奨励金 月額4万円 最大3ヶ月 (~2012.3月)
  • 3年以内既卒者採用拡大奨励金(~2012.3月)
  • 3年以内既卒者トライアル雇用奨励金(~2012.3月)  
特定求職者雇用開発助成金

特高年齢者(60歳以上65歳未満)を雇い入れた時の助成金
母子家庭の母 障害者 等
高年齢者雇用開発特別奨励金(雇い入れ日が65歳以上の離職者)

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