介護事業の労務管理(ケース No.3)
当事業所の常勤ヘルパーさんが最近「時間いっぱいまで介護業務をしているから、仕事時間以降に報告書を書いて提出してるけど、他所ではきちんと残業手当出てるらしい~」と言い出しています。5~6分程度で報告書は提出できるものですが、確かに、「時間いっぱい介護業務してください」とは指示していますが、どうしたらいいでしょうか。
了解。では、関係する事柄を順にご説明いたします。
その1:「労働時間とは」のポイント
- 労基法上の労働時間とは
「使用者の指揮命令下に置かれている時間」です。 - 労基法が規制する労働時間は、
実労働時間 = 【拘束時間 - 休憩時間】 - 一週間:40時間 (常時10人未満の介護事業所等は44時間)
一 日:8時間 超えて労働させてはならない。
※使用者の指揮命令があるか、ないか によります。
「労働者」の定義
- 事業又は事務所に使用されているもの
- 労働の対償として賃金が支払われているもの
※使用者との間に事実上の使用従属関係にある者
(契約名称如何に関わらず)⇒登録型ヘルパーさんも労働者です。
介護業務に直接従事する時間だけが労働時間ではない
①移動時間
事業所、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間のこと。使用者が移動を命じていて、その時間は労働者が自由に利用できない場合は労働時間です。
労働者宅から事業所又は利用者宅への直行直帰の時間は、通勤時間ですね。
②業務報告書等の作成時間
介護保険制度や業務規定等で業務上義務付けられているもので、事業所や利用者宅で作成している場合には労働時間となります。
③待機時間
使用者が急な需要等で対応するために事業所内等において待機を命じて、労働者もその時間を自由に利用できない場合は労働時間となります。
④研修時間
使用者の指示による研修は当然ですが、研修内容と業務との関連性が強く、それに参加しないと本人の業務に具体的に支障を来たすもの、実質的に出席の強制がある場合の研修は労働時間となります。
⑤制服等の着替え時間
裁判例の結論が分かれていますが、(直近の最高裁の判例では、)使用者の指揮命令下にあるか否かは客観的に定まるもので、就業規則等の定めのいかんにより決定されるものではない…就業規則や安全衛生法で義務付けていれば労働時間となります。(H12.三菱重工業長崎造船所事件)
※労働者の自主性、任意・自由な意思での行為であれば、あまり、就業規則に具体的な規定は避けた方がいいですね。
作業服に着替える行為は、「従業員としての心得」のレベルですね。新任研修等でしっかりと教育しましょう。
ちなみに、例えば、「朝礼当番でいつもより15分早く出勤した場合には、昼休憩を15分延長する」ケースが多いですね。昼休憩で調整がつかない場合は、午後休憩として3時頃に15分与えて~ですね。
今回のケースも、この対応はいかがでしょうか?
※就業規則・始終業時刻等変更内容を確認しましょう。
それか、5~6分なのか時間をキチンと把握して、時間外労働として、超勤手当(法内・法定外)を支給するかです。
※労働の時間管理の徹底を行いましょう。
- 法定労働時間 … 実労働時間
週40時間【10人未満 44時間】 1日 8時間 (休憩時間除く) - 所定労働時間 … 就業規則で定めた時間(法定内)
- 実労働時間 … 実際に働いた時間(遅刻、早退、休憩時間等を除いた時間)
- 拘束時間 … 始業から終業までの時間
-
法定労働時間を超える労働 → 時間外労働
時間外労働は違法 (労基法119条1号 罰則規定)なんです。⇒過半数代表者との労使協定(三六協定) の締結・届出(労基法36条)
※時間外労働命令の根拠
→ 労働契約上の根拠・就業規則の規定、労働者の同意が必要※三六協定は、違反を解除する効力のみ(免罪的効力)
※限度時間
⇒ 1週間 15時間 1ヵ月 45時間 1年間 360時間※時間外労働に対して、割増賃金が義務付けられている。(適法、違法関係なく)
※休日労働も同様。
その2:労働時間の適正な把握ポイント
始業・終業時刻の確認・記録
労働日ごとに、始業時刻、就業時刻を使用者が確認・記録し、これを基に何時間働いたかを把握・確定しましょう。
始業終業時刻の確認・記録の方法
- 出勤簿等に記入押印したものを確認・記録する。
- タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基に確認・記録する。
記録書又はデータは、労働者も確認でき、残業命令書等との突合に、時間外労働時間の確認をしましょう。
自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合
- 自己申告制導入前に、十分な説明を行うこと。
~自己申告制の具体的な内容、記入方等 - 自己申告の時間と実際の時間と合致しているか実態調査を行うこと。
~定期的な実態調査を行いましょう。 - 時間外労働時間の上限を設定しないこと。
~予算枠、目安時間を決め、超えると賞与減額等の不利益な取り扱いは要注意です。
記録に関する書類は、3年間保存
労務担当部長等の責任者は、労働時間を適正に把握し、過重な長時間労働が行われていないか、管理上の問題点があれば、講ずべき措置を把握・検討し、そして解消するという重要な責務があります。
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